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7QS-Hをたどる旅vol30

7QS-Hをたどる旅 なぜ、飛騨牛を選ぶのか

GANZOの7QS-Hの革には飛騨牛が使われています。本来、牛は肉質を重視して育てられますが、肉質を上げることはすなわち、皮においても自然と上質なものに仕上がるのです。いわば「肉の副産物」として位置付けられている皮に、革命的ともいえる工程を取り入れて、鮮度を落とさず運び出している場所が岐阜県飛騨市にあります。私たちが飛騨牛を選ぶ理由、それは日本で唯一無二の皮工程が施されており、完全国内生産にこだわっているからなのです。

大自然とともに生きる飛騨

雄大な北アルプスを臨み、大自然に抱かれた土地-岐阜県飛騨高山。古来より受け継がれた伝統文化が今も残り、美しい自然と人々の営みとの調和が、多くの観光客を引きつけています。清らかな水と澄んだ空気、飛騨の豊かな自然の恵みを存分に受けて、飛騨牛が育ちます。飛騨は日本の中でも一年を通して寒暖差が最も感じられる場所としても知られています。

ブランド牛としての確立

1988年に設立された飛騨牛銘柄推進協議会は、消費者に喜ばれる優れた銘柄牛の生産、肉用牛経営の安定、飛騨牛の販売普及促進等を目的とし、2018年1月に飛騨牛としてのブランド化が30周年を迎えました。飛騨牛は現在、岐阜県内で約1万頭が肥育されており、さまざまな紆余曲折を経て、そのブランド力を確立。今では岐阜県の特産物として真っ先に挙げられる程になりました。

皮の鮮度を最大限に活かす技術

飛騨牛のブランド化が進む一方、日本には「革の文化」が根付いておらず、牛皮の管理は肉と比べて最低限のものでした。そこに目をつけたのが姫路のタンナーだったのです。「皮を生で作業したい」という思いにこだわり、やっとの思いで出会ったのがブランド化が進んでいた飛騨牛、そして飛騨牛業者の人たちでした。

海外の技術を参考に生まれた「オリジナリティ」

日本では牛皮を塩漬けにして保存し、出荷されることが一般的ですが、皮の鮮度をさらに上質なものにするべく、「チルド」という保存方法を新たに採用しました。チルドとは塩漬けを一切せず、牛皮が凍らない絶妙な温度設定で冷却する保存方法のこと。これはタンナー自らが工場へ導入を促し、それに必要な機械もオーダーメイドで揃えました。この機械はヨーロッパをモデルにしており、実際に海外から技術者を連れてきて、皮の切る場所や切り方もレクチャーするこだわりぶり。この一連の作業を日本流にアレンジし、国内でここしかないチルド工程を誕生させたのです。この工程は特許も取得しており、まさに研究し尽くされた誰も真似することができない技術であり、本格的な導入まで約2年もの歳月がかかりました。

ハイリスクを伴うチルド工程

特殊な機械でチルドされた皮は長時間保存ができないため、スピードが勝負。1日置いてしまうだけで皮は腐ってしまうため、作業時間は長くても3時間程。そのため「待った」がきかず、全て商品として売らなくてはいけないプレッシャーと、年間を通して組まれる作業スケジュールは、タンナーにとって非常に負担になります。このことから他の多くのタンナーは、リスクが高いチルド工程を導入しないまま今日に至ったのです。飛騨に誕生した唯一無二の技術は、姫路のタンナーによる品質への飽くなき追求と、飛騨牛に関わる人たちの思いが一つになったものなのです。

飛騨から姫路へ渡されるバトン

飛騨からチルド工程で運ばれた新鮮な皮は、国産革の生産数No.1 である兵庫県姫路市で鞣(なめ)されます。「鞣す」とは、読んで字のごとく皮を柔らかくし、耐久性や耐水性を与えること。姫路は革生産が根付いている地域ですが、近年徐々にタンナーの数も減少しており、7QS-H はその貴重でこだわり抜いた鞣し方法で生まれます。

歴史と伝統を受け継ぐ、タンナーの街

古くより鞣しの技術が発展してきた姫路市。皮革生産の地として 1400 年の歴史が流れ、革の生産数、タンナーの数で日本一を誇ります。姫路は元々が城下町で、武具などを作っている地域でした。その武具にあわせるため革の存在が必要不可欠となり、その名残で今でも革を鞣せる人たちが存在しているのです。鞣しの工程で重要な上質な水源が豊富にあることも今日まで発展してきた要因で、水質の高さはすなわち、高品質な革を安定して生産できる証です。

「皮」から「革」へ変わるまで

  • 1. 原皮から本鞣し

    飛騨から運ばれた新鮮な原皮はドラムに入れて丸洗いし、脂を取ります。次に牛毛を薬品で溶かし、均一な厚さに。そして皮を分割して酵素で皮を柔らかくしていき、塩と酸で鞣しに適した状態へ持っていきます。これらの工程を経たのち、鞣し剤といわれる薬品を入れ、本鞣しを行います。この本鞣しを終えた皮を、「革」と呼ぶのです。

  • 2. エイジング

    鞣しを終えると、季節にもよりますがその状態で約6~8ヶ月寝かせて乾燥させます。通常、他のタンナーはエイジング工程を行わないのですが、「革は時間をかければかけるほど上質なものになる」ということからこの工程は欠かせません。またエイジングの前後には、7QS-H で使用するにふさわしい革を厳選する工程が含まれます。

  • 3. 染色加脂

    エイジングを終えると、完全な革ベースが出来上がります。ここで再度厚みを揃えたのち、ドラムに入れて色を付け、油を加えます。この染色から加脂の順序はここ独自のやり方で、7QS-H シリーズは通常の商品と違い、油の配合、種類、時間のかけ方が異なり、他の商品よりもたっぷりと油を入れるのが特徴です。

  • 4. 最終工程

    染色加脂した革を、日本に一台しかないオリジナルの機械に入れ、その中で革を伸ばしてある程度の水分を取ります。そして手で革を干し、ゆっくりと自然乾燥させます。その後色艶を調整し、色落ちしないように色止めを施します。このように様々な工程を独自にアレンジすることで、7QS-H で使われる上質な革が出来上がるのです。

革の表情を生み出す職人

原皮を革へと変えていく作業はタンナーによって違う表情を生み出すといいます。本来、本鞣しの前に「前鞣し」という工程を挟むのが一般的ですが、こちらではイタリアと同じように直接タンニン剤を入れて、最初から本鞣しを行います。そうすることで型崩れせず、丈夫かつ上質な革商品に仕上がるのです。直接タンニン剤を入れることはさまざまなリスクも伴いますが、イタリアの工程に倣い、「少しでも良い革を」という精神のもと、取り組まれています。
また薬剤の組み合わせ、アイロン行程の有無、温度管理やスピード、乾燥に至るまで、完全オリジナルのレシピを編み出し、革と接しています。どの薬品、仕上げ剤を使うのが適切か。自分たちの目で見て、厳選し、直接仕入れをし、作業を行っています。これらの革工程は自社に機械を設置しているからこそできることで、一部工程を除き、ほとんど外注せず自社で作業を行うことも珍しいといえます。7QS-Hに使用される革は、飛騨から姫路へと続く職人たちのこだわりとノウハウが詰まったもので、それらどの工程も欠かせません。ぜひあなたの目や手で、飛騨革の表情を味わってみてください。

7QS-Hの魅力

7QS-Hは“Seven Qualities Shrink -HIDA”の略。セブンクオリティーズとは、「素材」「裁断」「すき」「縫製」「へり返し」「磨き」「仕上げ」の7工程、すべてにおいて上質を追求するGANZOのスピリットを込め、命名しました。ビジネス、オフタイムにおける男性の七つ道具を仕舞い込めるデイパックやバックパックは必見の型です。今回実際に記事でご紹介した通り、飛騨牛には日本で唯一無二の皮工程が施されています。その一つ一つの革の表情や変化を感じていただき、あなたにとって特別なアイテムになれれば幸いです。

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