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美しいシボが織りなすKESEMAvol37

美しいシボが織りなすKESEMA サメ革に込められた気仙沼復興の背景

2020年3月で東日本大震災発生から9年。被災地の一つ、宮城県気仙沼市を見渡すとリアス式海岸の入り組んだ地形が見て取れるのと同時に、街や港は整備され、少しずつ復興に向かって歩んでいることがうかがえます。GANZOが展開する新シリーズ「KESEMA」もこの気仙沼漁港で水揚げされたヨシキリザメの革を使用しています。

気仙沼の象徴である「サメ」

江戸時代末期頃から気仙沼は「サメの街」として知られ、水揚げ量は今では日本一を誇ります。しかし震災直後は漁港が破壊され、十分な原皮を確保することが困難になりました。その中で奇跡的にも一部の設備や漁船が無事だったこともあり、震災から9ヶ月後に水揚げ漁が再開。復興への足がかりとなりました。

世界で最も美しいヨシキリザメの皮

原皮となるヨシキリザメは全長約2m〜3mあり、年間約6,000トン水揚げされ、そのうち革になるのはわずか1%。頭部が大きく、ヒレが長いため皮として獲れる面積が少ないことや、繁殖期になるとオスがメスに咬みつく習性があり、体中に傷が付いてしまい商品化ができないことがその理由として挙げられます。決定的なのは自然界の生き物であるがゆえ、養殖が困難だという点。これら3つの要因から希少価値が高い天然素材として認知されているのです。ヨシキリザメはサメの中でも最もシボが美しく、顕著に表れるため、サメ革の中でも最高品質の呼び声が高いとされます。

サメ資源を完全利用

サメの水揚げ漁が始まるのは夜明け前。腐敗が進まぬよう、漁場に到着するまでの船上にて、頭部と内臓が取り除かれます。水揚げ後は、一箇所に全て集められ、選別工程へ入ります。選別は「サメの種類」、「大きさ」、「鮮度」で振り分けられ、その後ヒレ、正肉、皮、骨として用途別に切り分けが行われます。このように気仙沼ではサメ資源を重んじて、持続可能なサメ漁業のために全てを余すことなく有効活用しているのです。

気仙沼復興のために

元々、サメ専門の食品加工業者として原皮を確保し、タンナーへ提供するまでが気仙沼の役割でしたが、震災後は後述する長野のタンナーが「復興を後押ししたい」との想いから、鞣し技術を継承。気仙沼に皮革の専門機械を導入し、技術者を派遣。現地で水揚げから鞣しまでの作業を行えるように徹底的に指導したのです。
原料となる皮を現地で鞣すことは極めて異例で、「サメ事業を絶やさぬよう、気仙沼復興のために何ができるのか」という想いから、技術を継承したタンナーは「指導すれば現地でも十分に鞣せる」という事実を作りたかったといいます。また高品質な原皮の確保は気仙沼において紛れもない強みであり、それをしっかりとバックアップしてサメの文化存続を繋いでいくことが復興への第一歩だと考えたのです。こうしてサメ事業を通した復興のために、何年にもかけて地道な取り組みが続きました。

タンナーから継承された
鞣し工程

塩漬け〜脱鱗

はじめに新鮮な原皮を1ヶ月間塩漬けにし、その後薬剤に浸します。これは皮の水分を抜くと同時に、「生脱鱗」という鱗を落とす重要な工程。一般的には鱗付きのまま鞣し、後に脱鱗するのが主流ですが、先に鱗を取ることで革の仕上がりに幅と奥深さがでるのです。その後、塩水に入れて中和させ、漂白、侵酸します。

銓掛け(センカケ)

上記の工程で残ってしまった鱗を一枚一枚手作業で削り落としていく「銓掛け」。少しでも鱗が残ると乾燥した際に目立ってしまうため、表面のシワを伸ばし、力強く、丁寧に取り除きます。この一連の作業工程は日本では唯一こちらでしか行われておりません。最終的に鱗を落とすのは全て手作業なため、月に約1,000〜1,500枚と量産が難しいことがサメ革の希少性を高めているのです。

鞣し

「皮」から「革」にするため植物タンニンを使用し、長時間鞣します。行程中に浴液の温度が変化するため、季節ごとに繊細な温度調整が求められます。

シェービング

鞣し終えた革中の水分を絞り、革の厚みを均一に揃えるため、肉面側をシェービングマシンで削ります。

再鞣し

さらに革の特性や物性物理を高め、よりオリジナル性を持たせた革へと仕上げるために、再度鞣します。

乾燥

再鞣しを終えた革の水分を取り除くため、乾燥作業。気仙沼での作業はここまでとなり、仕上げ工程はこの一連の鞣し技術を継承した長野・飯田市のタンナーが施します。

タンナー産業が根差す
風光明媚な飯田市

大自然の山々に囲まれ、工場の側には澄んだ川が流れる長野県飯田市。気仙沼の復興を後押ししたタンナーのもと、最終仕上げが行われます。工場には約50名在籍しており、革作り作業は多能工方式を導入。一人でいくつものセクションを担うことができる職人が揃っています。こちらの飯田市でもサメ革の鞣し作業を一部行います。

繊細かつ熟練した技術が試される
「仕上げ」

気仙沼で鞣された革に柔軟性と独特のシボ感を持たせるため、革を揉みほぐします。不要な部分は手作業でカッティングし、水戻し。こうして染色工程の準備へと入るのです。メスはシボが大きく、オスは細かいことが特徴で、両者ともに異なる美しさがあるといいます。この状態で染色ドラムに染料を入れ、革を染めていきます。最後に「板張り」と呼ばれる乾燥工程ですが、板に革を広げて留めていく工程は非常に技術を要します。乾燥した際、革が縮みすぎないように、一枚ずつ丁寧にシボを直して上質なサメ革を完成させていくのです。

KESEMAに込められた想い

GANZOが共感した「復興支援」、「生脱鱗」。サメ革は他の革には見られない重厚さや奥ゆかしさが感じられ、水に強いことが特徴。ヨシキリザメならではの革の表情がそこにはあり、使い込むことでより深みが増していきます。サメ革に込められた人々の想いや様々な背景を感じ、自分好みの革として育ててみてはいかがでしょうか。

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