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GANZO TIMES VOL.04vol21

VELVET YUZEN ビロード友禅の復活と革とのコラボ

髙島屋「Nipponものがたり」として作られることになったのは、京友禅の老舗『千總』が技を集結させて再現したビロード友禅と、革小物のドメスティックブランド『GANZO』のコラボアイテム。訪ねたのは明治に生み出され、新たな技法を合わせて現代に復刻したビロード友禅が作られる工房。

『千總』のロゴマークは千切台と呼ばれる祭礼のための道具をデザイン化したもの。
遠祖が宮大工として千切台を製作・奉納していた千總のルーツに由来する。

京都・烏丸三条にて弘治元(1555)年に法衣装束商として創業した『千總』。後に友禅染を家業とし、現在まで京友禅のオーソリティとしてあり続ける老舗だ。髙島屋「Nipponものがたり」のためのコラボレーション商品に、『千總』が創案したビロード友禅を取り入れたのも同じ京都で創業し、深い縁を持っていたからにほかならない。

ビロード友禅が『千總』12代目西村總左衛門によって創案されたのは明治11(1878)年のこと。明治に入り定型化しつつあった京友禅のデザインを、岸竹堂ら日本画家に図案を依頼することで新たな展開をみせる。そうして誕生した京友禅を海外の博覧会に出品するなど、12代目が意欲的に取り組んだ新事業のひとつがビロード友禅だった。ビロード生地に友禅染の技法で花鳥風月を描いたビロード友禅は、生地の毛足の長さが絵柄に立体感と奥行きをもたらし、独特の迫力を醸し出す。明治後期から大正にかけ、美術品や室内装飾品として人気を博していたのも想像に難くない。

インハウスデザイナーを持ち、460年の歴史で培われた美意識を活かしながら、常に新しい図柄の提案を行ってきた『千總』。
今回の迷彩柄も温故知新の思いから生み出された。

『髙島屋』との縁が始まった明治時代へと思いを馳せ、『千總』が今回のコラボレーションのためにスポットを当てたのは、現在ではほとんど作られなくなっていたビロード友禅。友禅染の技法のひとつ、型友禅でビロードを染めるというのもまた新たなチャレンジだった。型の上から染料を乗せて染める技法で、細かい柄の再現も可能な手捺染。図柄は古典柄の雲をモチーフに、迷彩風にアレンジしたものだ。雲は古くから使われてきた古典柄のひとつで、雲の上には極楽があることから、未来永劫への願いを託した吉祥文様でもある。「雲が連なることでつながりを意味し、また異素材や髙島屋とのつながりも表現しました。和に偏りすぎず、今の時代のお客様に寄り添うものをと迷彩柄に。着物よりももう少し実用性の高いものとのコラボを考え、革との組み合わせを提案しました」と高島屋グループの不破健さん。

コラボレーションするアイテムとして選ばれたのが靴の最高峰ブランド『John Lobb』と、質実剛健なドメスティックブランド『GANZO』だった。「世界でトップレベルのものづくりをしているという自負はあります。本物を作り続けてきた老舗と一緒にものづくりができることに大きな魅力を感じました」と振り返るのは『GANZO』を展開する株式会社AJIOKAの味岡将平さん。『GANZO』からは日本固有の飛騨牛を使用した7QS-Hシリーズの中でも、デイリーユースできるようにとリュックを提案した。

江戸初期から続く、輪奈ビロード

現在芯材の主流となっているのはポリエステル製のテグス。テグスに色が付けられているため、文様が浮かび上がって見えている。

では手捺染によるビロード友禅はどのようにして作られるのだろう。向かったのは滋賀県長浜にあるビロードづくりの工房。400年ほど前にポルトガルから伝来したビロードは、江戸初期には日本でも生産されるようになったという。生糸の生産地でもあった長浜は当時も今も変わらず、日本きってのビロードの生産地でもある。

ビロード生地はジャガード織をベースに、針やテグスなどの芯材を一緒に織り込んで作る有線ビロードで作られる。織り上がったところで生地から芯材を抜き取れば、糸が輪奈(ループ)になって残ることから輪奈ビロードと呼ばれる独自の製法。
この輪奈をカットして毛羽立たせれば、滑らかな毛切り(本天)ビロードになる。ジャガード織で作られた地模様の輪奈を部分的に毛切りすることで、豊かな表情を持つビロードが作られているのだ。

12台の織り機が休みなく動く輪奈ビロードの工房『タケツネ』。現在、絹のビロードが作られているのはここだけ。
機械とはいえ、テグスの交換や糸の調子の確認は人の手で行われる。1日に織ることができるのは5~6mほどで、一反を織るには2日間が必要。

一握りの職人だけができる「毛切り」

まずは模様を組織の変化やその組み合わせで織る紋織という技法で生地を織り上げる。次にビロードに仕上げたい部分の輪奈だけを、1本1本小刀でカットする工程。強く切ればベースの生地まで切ってしまい、弱ければ輪奈が切れない。決められた範囲から少しでもはみ出してしまえば、一反丸々がダメになる。絶妙な力加減と見極めはまさに職人だけの技だ。続いて針抜きと呼ばれる作業でテグスを抜き取れば、ようやくビロード生地が完成する。この針抜きも簡単なように見えて、少しでも歪むと生地を傷つけることになり、力を入れすぎると摩擦による熱で布が溶けてしまう。滋賀県の伝統工芸品にも認定されているこの輪奈ビロードは、手仕事による積み重ねで生み出されているのだ。

微妙な加減が必要な毛切りの作業。工房の中でも担当できるのはほんの一握りの職人だけという。

中央のひときわ濃い色の紅葉だけが、毛切りして毛羽を立てた部分。糸目が見えない滑らかさと、しっとりとした質感が特徴。

針抜き作業。左手の付近に一筋白く見えるのが、テグスを抜いた部分。ビロードは白生地で織られるため、針抜きの前に毛切りを行う。

輪奈ビロードの完成品。上のブルーの生地は全体に毛切りを施した全切り。全切りの場合カットできるのは1日に40cmほどで、1ヶ月もの時間が掛かる。

表情をつくる摺り友禅

通常、生地の地紋は紋紙という型で織り機に伝えられ織り上げられるが、今回はコラボ商品だけのための特別仕様。無地で織った生地に、後に毛切りを施すための図柄を直接描いた。

カット・芯抜き・地染め・板貼り・捺染へと進む。板に生地を貼り、何枚もの型を使って刷毛で染めていく工程だ。総摺りと呼ばれる色見本を見ながら、反物の最初から最後まで同じ色に染める作業もまた職人技。刷毛を使うことで表情が生まれ、型紙に通常施さない紗張りの加工を加える事で柄に厚みを出すという。輪奈のある立体的な生地を染める作業は千總の型友禅を手がける100年の歴史を持つ工房でも初めてのこと。幾度もの試行錯誤の上にようやく納得のいく色に染め上がったという。

現在も京都に残る摺り友禅の工房は4~5軒ほどしかないという。

見本の色を参考に染料の調合も工房で行う。微妙な色合いも基本の6色の組み合わせで作られいている。

型紙に丸い独特の刷毛で色を摺り込む。今回はあえて地紋と柄を合わせずランダムに置くことで、様々な表情を演出した。

ビロードではなく他の生地に行われた試し摺り。この後に蒸して熱を入れ、色を生地に固定させる。

掛かった時間は実に半年以上。ビロード生地を作る『タケツネ』武田泰稔さんも、染めを担当した『正木染工』正木壽さんも、気軽に引き受けたものの想像以上に難しい作業だったと振り返る。現在はビロード友禅がほとんど作られていないというのも、要求される技術の高さゆえのことと思わせるエピソードだ。

『千總』というディレクターの元、何人もの職人の技術力を結集して生まれた現代のビロード友禅。革という異素材と出合い、靴、そしてバッグへと姿を変えたのが髙島屋「Nipponものがたり」商品なのだ。

GANZO × 千總 ビロード友禅バックパック

『GANZO』とのコラボ商品。実用性と耐久性という観点から考慮し、ビロード友禅を使用するのはかぶせの部分のみ。黒のボディには紺色の、赤茶にはバーガンディのビロード友禅を合わせた。

販売店舗
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