CANVAS力強く、美しい生地
瀬戸大橋が臨め、昔ながらの三角屋根が残る町並み。そんな場所で、GANZOのコレクション「CB-1」シリーズで使用しているキャンバスは織られています。バッグや衣類など生活用品のいたるところで使用され、私たちの身近にある「帆布(はんぷ)」。帆布とは英語でいうキャンバスのことで、撚り合わせた綿糸を用いて織った、平織りの地厚い織物のことです。国内生産の約70%が岡山県倉敷市で製造されており、「GANZOキャンバス」も市内にある児島味野地区で産声をあげました。昔ながらの製法で手間をかけて作られたキャンバスは、使い続けるほどに味わいが出て、通気性が良く、耐水性にも優れています。
引き継がれる技、紡がれる歴史
GANZOキャンバスの製造窓口を担うのは、90年以上の歴史を誇る「荻野製織」。大正10年に創業した荻野製織は、広幅織物(ベルベット)や足袋から出発し、昭和に入ってから帆布の用途が広がると、東京・大阪のアパレルメーカーの靴や様々な雑貨の帆布を製造するようになりました。外注先の製織工場で稼働している「シャットル織機(しょっき)」と呼ばれる動力式の力織機。すでに製造を終了している旧式のものですが、このシャットル織機によって独特の風合いを持つ帆布が生産されるのです。1番新しいシャットル織機でも20年以上前のものになります。職人たちのメンテナンスによって、毎日規則正しい音を立てながら今も現役で稼働しています。
270×5=1350本の糸
帆布を織る糸は、1本1本引き揃え「合糸(ごうし)」した糸を、3本に撚り合わせる「撚糸(ねんし)」を行ってから使用します。撚り合わせることで毛羽を抑え、帆布の厚みに違いを生みます。撚糸が終わると、次にシャットル織機にタテ糸をセットするために、「ビーム」と呼ばれる糸巻きにタテ糸を巻き付けて整えていく「整経(せいけい)」作業。GANZOキャンバスの場合は、約1350本の糸を270本ずつ5回に分けて整経する「部分整経」を行います。最後に、3つの部品に1本ずつ1000本以上のタテ糸をセットする「経通し(へどおし)」というとても手間がかかる作業を終えて、ようやくシャットル織機を稼働する準備が整います。
シャットル織機と職人と職人
シャットル織機の「シャットル」とは、タテ糸の間にヨコ糸を通すために使われる「飛び杼(とびひ)」という道具のこと。シャットル織機は、ヨコ糸を取り付けたシャットルがタテ糸の隙間を左右往復することで糸を織り込んでいきます。GANZOキャンバスの特徴である凹凸の風合いは、このシャットルが横切ることで生まれます。1日に6〜7時間稼働して製造されるのは、約1反(50m)程。反のつなぎ目で織機が必ず停止したり、糸は乾燥に弱く切れてしまうことが多々あるため、シャットル織機の稼働中、職人たちはシャットル織機を注意深く点検しなければなりません。
帆布と向き合う
織り上がった帆布を職人自ら肉眼で確認し、不良個所-糸のほつれ、糸の切れなどがあれば丁寧に修正する検反(けんたん)作業を行い、生地をたたみます。製織工場でGANZOキャンバスを作る職人に、シャットル織機の苦労についてお伺いしました。
「何にしても大変です(笑)。天候に左右されて糸は切れるし、ほこりにまみれながら作業をしています。シャットル織機は古いものなので、破損してしまうと大変なんです。引退したシャットル織機は余っているところが少ないので、全国から探して買い取り、部品だけ抜いてシャットル織機の壊れた部品の代替用に使用します。それでも古いシャットル織機を使う理由は、シャットル織機だからこそ出せる布面のうねと風合いがあるからです」。
そして、染色へ
検反されたGANZOキャンバスの生機(きばた)は、岡山県の製織工場から大阪府にある染工場へと搬送。生地を漂白して真白な染加工前の生地にしていきます。漂白によって染料のなじみを良くする工程です。この工程を経て、染色の下準備をしていきます。
正解のない色づくり
GANZOキャンバスの染色は、大阪府にある染工場で行います。染色の前工程として、洗剤やアルカリの水溶液中で熱して汚れや綿かすを除く「精錬(せいれん)」、ヨコ糸が戻ろうとする力を利用して布面に凹凸を出す「晒(さらし)」と呼ばれる下準備を行います。この後、染色に適した単位にミシンで繋ぎ合わせ、ロールに巻き付け、もう1本のロールで巻き取る途中で染液にくぐらせて染色する「ジッカー染色」という染色方法で染めていきます。染色は季節や温度、染色する職人によって全く異なる色合いになるので慎重な作業です。色づくりにしても正解がないため、職人たちの研鑽された技と感覚で、出来るだけオーダーを受けた色に近づけていきます。
試行錯誤の日々
染色工程が終わると、色落ちを予防するための加工や特殊な撥水加工を施して含浸、乾燥。
GANZOキャンバスの染色工程が完了します。染色の職人に帆布の染色についてお話を伺いました。
「染色は毎回同じ作業をやるわけではなく、果てなき探求です。先輩の染色作業を見たり、作業工程を頭に叩き込んで、自ら志願して染色作業をやらせてもらいます。色を出すのは、この色が出せるか出せないかではなく、やるかやらないかの問題だけ。何度も悪戦苦闘して染色するコツを体で覚えます。出来上がったものには1反1反思い入れがあるので、大事に使ってほしいですね」。
気品のあるキャンバス
GANZOのコレクション「CB-1」シリーズで使用されるキャンバスは、メンテナンスが必要な昔ながらのシャットル織機で織られ、職人の技術がそのまま染色に反映されるジッカー染色を経て完成となります。タテ糸とヨコ糸が織りなす独特の凹凸、ジッカー染色で染め上げた色味。日本の伝統的な製織・染織技術によって出来上がったGANZOキャンバスは、丈夫で温かみがあり、手ざわりの良いものです。使い込めば使い込むほど味わいが増します。そのひとつひとつがこれまで見てきたように大変手間のかかる作業によって出来ています。ぜひお使いいただき商品の品質をお確かめください。