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対談MADE IN USAとMADE IN JAPAN Jiro Ishikawa meets GANZO

対談“日本の物作り”について語ろう 対談MADE IN USAとMADE IN JAPAN Jiro Ishikawa meets GANZO

厳選された上質な素材と熟練の職人の技術により、ハイクオリティなアイテムを生み出し続けているレザーブランド『GANZO』。同ブランドのディレクターである味岡儀郎氏と各界のクリエイターが、“日本の物作り”について語り合うこの連載も3回目となる。今回、ご登場いただいたのは、数々の人気雑誌を手がけた名編集者として知られる石川次郎氏だ。『MADE IN USAカタログ』により、アメリカの物作りをいち早く日本に伝えた石川氏と、かたやMADE IN JAPANの物作りにこだわり続ける味岡氏。『MADE IN USAカタログ』の知られざる裏話も交えつつ、対談は盛り上がりを見せた。石川次郎(以下、石川)/味岡儀郎(以下、味岡)

MADE IN USAカタログの衝撃と、その裏話

石川
旧くからの付き合いですが、実は儀郎さんがGANZOを手がけていることを知ったのはここ数年のことなんですよ。
味岡
兄弟ともどもかわいがっていただいて…。
石川
知り合った当時はまだイタリアンのシェフをされていたんですよね。厨房に立って腕を奮っていた姿を覚えていますよ。ご実家が革製品の仕事をしていることは、その頃から知ってたんだけど、まさか儀郎さんが、こんなブランドをやるようになっていたとはね。
味岡
イタリアに料理修業に出ていた時期があるんですが、実家が革製品を扱っていたもので、修業の合間に現地のメーカーの製品を見て回っていたんですよ。そうすると工場やタンナーの関係者と知り合いになったりして。そういう経験もいまに生かされているのかもしれません。
MADE IN USAカタログの衝撃と、その裏話

GANZO表参道本店にて。二人は旧くから家族ぐるみで付き合う仲。

その点で言うと、石川さんは70年代にアメリカに取材に行って『MADE IN USAカタログ』を制作された。当時、まだ日本ではあまり知られていなかったアメリカのものづくりを見て、随分影響を受けられたのではないですか?
石川
もう40年も前のことですけどね。当時はインターネットも無いし、海外の情報なんて、そう簡単に知ることはできなかった。アメリカ製品について伝えているようなメディアもその頃はありませんでした。しかし、それだから作ったというのではなく、実は本当に偶然の産物だったんです。当時の上司だった木滑さん(現マガジンハウス取締役最高顧問)とどんな雑誌を作ろうかと毎晩のように飲みながら話していたんですが、ある時、自分が着ていたリーのストームライダーのラベルが目に留まった。そこに小さく“MADE IN USA”という表記があったんです。そこで、これをタイトルに1冊作ったら面白いんじゃないかとひらめいて、すぐにその場で提案したんです。そして、そのまま提案が通って、『MADE IN USAカタログ』を制作することになった。偶然の産物なんですよ。
味岡
しかし、『MADE IN USAカタログ』の登場は衝撃でした。中に載っているワークブーツやヴィンテージギターに憧れたものです。表紙に使われているリーバイス501XXに至っては、僕のファッション観の原点になったといっても過言ではないですね。
石川
実はあれには裏話があるんですよ。取材の途中、アメリカのジーンズショップで試着していたんです。すると試着室の壁にリーバイスのポスターが張られていた。とても素敵なイラストのポスターがあったので、お店の人にお願いして譲ってもらったんです。そして、ホテルに持ち帰って複写した。あまりにいいイラストだったので、もうこれを表紙にしようという話になってしまい、日本に戻ってから当時のリーバイスジャパンに使用許可の申請をしたんですよ。当時の日本ではまだ501XXなんてほとんど売られていなかったし、知名度も無かったから、“宣伝になるならいいですよ”という感じでOKが出た。ですから、あの表紙のイラストはリーバイスが制作したものであり、なおかつリーバイスが公認したものだったんですよ。
味岡
それは知りませんでした。
そんなエピソードがあったとは…。
石川
いまでもあれ以上の表紙は無かっただろうと思っています。
個性を打ち出すことでブランド力が生まれる

味岡氏が持参した『MADE IN USAカタログ』。「こんなにいい状態で残っているのは珍しいですね」と石川氏。表紙のインパクトは、いまも色褪せない。

存在する意味のあるものを見極めたい

味岡
使い続けることで生まれる経年変化の魅力が一般に認知されるようになったのもこの頃からではないでしょうか? ジーンズにしろ、ワークブーツにしろ、『MADE IN USAカタログ』を読んで、多くの若者が使い込んだ味わいに魅了されたと思います。
石川
僕はね、ものの美しさの本質はやはり使われたものの中にあると思っているんです。もちろん新品の完成された直後の美しさというのもあるけど、愛情を込めて使われたものが醸し出す美しさに僕は魅かれてしまいますね。実は、今日履いてきた靴は、『MADE IN USAカタログ』の取材で訪ねた店で購入したコールハーンのコードバンのシューズなんです。もう40年近く前のものですが、大切に履いているのでいまもこんなに状態がいいし、普通に履くことができる。それって素晴らしいことですよね。
味岡
僕もそういうものづくりがしたいと痛切に思います。
石川
儀郎さんが手がけているGANZOの製品を拝見しましたが、“非常にいいものづくりをされているな”とすぐに感じました。デザインしていないデザイン。それが良いと思います。いま新しいブランドを立ち上げようとすると、どうしてもブランドイメージを作るために目立つことをしようとする。しかし、GANZOの製品には、奇抜なところが一切無い。まるで100年以上前から変わず作られているもののように見える。儀郎さんは、新しさとは違う何かを求めてものづくりをしていると感じました。
味岡
ありがとうございます。GANZOの製品はすべて日本の職人が作っているんです。日本ならではの職人技を継承していくというのも私たちの役割だと思っていますので。
石川
やっぱりきちんと作られていることが、いいものの絶対条件ですよね。本当にいいものは輝いているんです。存在する意味を感じるんです。いくらいい素材を使って贅沢に作られたものでも、意味を持たないものもある。その一方、職人さんが地道にコツコツと作った大して派手さのないものに感銘を受けることもある。そんな風に、いいものの見極めをできるかどうかが大切だと思うんですよ。
手仕事と経年変化が生み出す“味”に惹かれる

石川氏が“今日のために”と穿いてきたコールハーンのサドルシューズ。『MADE IN USAカタログ』の取材旅行の際に買ったもの。40年も前のものとは思えないツヤ。

GANZOが雑誌のタイトルに?

石川
ところで、GANZOってどういう意味なんですか?
味岡
フィレンツェの方言で、“いいね!”というようなニュアンスで使われるスラングです。上品な言葉ではありませんが、男っぽい響きに魅かれて名付けました。
石川
いい言葉ですね。濁音が入ると男っぽさを感じるものなんですよ。その点、GANZOには、”G”と“Z”、2つも濁音が入っている。最初にそのブランド名を耳にした時に思ったんですよ。雑誌のタイトルにいいなって。名前の由来を聞いて、なおさらそう感じました。

Jiro Ishikawa × Yoshiro Ajioka

石川次郎
石川次郎/1941年生まれ、東京都出身。大学卒業後、旅行代理店勤務を経て、平凡出版(現在のマガジンハウス)に入社。雑誌『POPEYE』『BRUTUS』『平凡パンチ』等の編集長を歴任。93年に退社後、編集プロダクション「JI」を設立。多くの雑誌・TV番組制作に携わっている
味岡儀郎
味岡儀郎/1957年生まれ、東京都出身。料理人を目指してイタリア修業した後、東京でレストランをオープン。その後、1999年に上質な革と職人の手によるジャパンメイドにこだわったレザーブランドGANZOを立ち上げ、ディレクターを務める
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